赤ちゃんは1日の大半を眠って過ごし、高齢になると朝早く目が覚めるようになる――睡眠は年齢とともに大きく変化していきます。しかし、その変化がどのようなメカニズムで起きているのかを知っている方は意外と少ないのではないでしょうか。
年齢ごとの睡眠の特徴を理解しておくと、「この時期はこういう眠りが普通なんだ」と安心できたり、「今の自分にはこの対策が必要だ」と具体的なアクションにつなげたりできます。子育て中の方にとっては、お子さんの睡眠を理解するうえでも役立つ知識です。
この記事では、赤ちゃんから高齢者までのライフステージごとに、睡眠の質と時間がどのように変化していくのかを詳しく解説していきます。
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睡眠が年齢で変わる理由
睡眠の変化には、主に2つのメカニズムが関わっています。
ひとつは体内時計(概日リズム)の変化です。体内時計は脳の視交叉上核(しこうさじょうかく)という部位にあり、光の刺激をもとに約24時間のリズムを刻んでいます。このリズムは年齢とともに変化し、思春期には夜型に、高齢期には朝型にシフトする傾向があります。
もうひとつは睡眠構造(スリープアーキテクチャ)の変化です。深い睡眠(ノンレム睡眠のステージ3、徐波睡眠とも呼ばれる)の割合は加齢とともに減少し、浅い睡眠の割合が増えていきます。これが「年をとると眠りが浅くなる」と感じる主な原因です。
新生児・乳児期(0〜1歳)の睡眠
睡眠の特徴
新生児の睡眠は、大人とはまったく異なる構造をしています。まず、体内時計がまだ確立されていないため、昼夜の区別がなく、2〜4時間おきに眠ったり起きたりを繰り返します。
また、新生児の睡眠の約50%がレム睡眠(動睡眠)を占めています。大人のレム睡眠の割合が20〜25%であることと比較すると、非常に高い割合です。これは脳の発達にレム睡眠が重要な役割を果たしているためと考えられています。
推奨睡眠時間
新生児(0〜3ヶ月)は14〜17時間、乳児(4〜11ヶ月)は12〜15時間が推奨されています。生後4ヶ月頃から徐々に昼夜のリズムが形成され始め、夜にまとまって眠る時間が増えていきます。
この時期に気をつけたいこと
夜泣きに悩む保護者の方は多いですが、生後6ヶ月頃までの夜泣きは発達の過程として正常なものです。焦らず、赤ちゃんの睡眠リズムが整うのを待ちましょう。朝は明るい環境で過ごし、夜は暗くするという光の環境を整えることで、体内時計の発達をサポートできます。

幼児期(1〜5歳)の睡眠
睡眠の特徴
幼児期に入ると体内時計がしっかり確立され、夜にまとまった睡眠がとれるようになります。レム睡眠の割合も徐々に大人の水準に近づいていき、深い睡眠の割合が増加します。
この時期は昼寝の役割が大きいのも特徴です。1〜2歳では午前と午後に2回の昼寝をとることが多いですが、3歳頃になると午後の1回にまとまり、5歳頃には昼寝を必要としなくなる子どもが増えてきます。
推奨睡眠時間
1〜2歳は11〜14時間(昼寝込み)、3〜5歳は10〜13時間(昼寝込み)が推奨されています。
この時期に気をつけたいこと
就寝前の興奮は寝つきを悪くします。テレビやタブレットの視聴は就寝1時間前には終えて、絵本の読み聞かせなど穏やかな活動に切り替えましょう。また、規則正しい就寝・起床時間を設定することで、体内時計が安定します。
学童期(6〜13歳)の睡眠
睡眠の特徴
学童期は成長ホルモンの分泌が盛んな時期であり、深い睡眠がしっかり確保される年代です。成長ホルモンは主に就寝後の最初のノンレム睡眠で分泌されるため、寝つきの良さと深い眠りが成長に直結します。
この時期の子どもは、寝つきが良く、朝までぐっすり眠れることが多いです。ただし、習い事や塾で帰宅が遅くなると、就寝時間が後ろにずれてしまうケースが増えています。
推奨睡眠時間
6〜13歳は9〜11時間が推奨されています。しかし、文部科学省の調査によると、日本の小学生の就寝時間は年々遅くなる傾向があり、推奨時間に達していない子どもが少なくありません。
この時期に気をつけたいこと
睡眠不足は学業成績にも影響します。十分に眠ることで記憶の定着が促進されるため、夜遅くまで勉強するよりも早く寝たほうが学習効率は高くなります。
思春期(14〜17歳)の睡眠
睡眠の特徴
思春期は睡眠にとって最も難しい時期のひとつです。ホルモンの変化により体内時計が夜型にシフトし、夜遅くまで眠れず、朝起きるのがつらくなります。これは怠けではなく、生理的な変化です。
一方で学校は朝早くから始まるため、慢性的な睡眠不足に陥りやすくなります。さらにスマートフォンの普及により、夜遅くまで画面を見る習慣がこの傾向を加速させています。
推奨睡眠時間
14〜17歳は8〜10時間が推奨されていますが、日本の中高生の多くはこの時間に達していないのが実情です。
この時期に気をつけたいこと
可能であれば、就寝前のスマートフォン使用を制限し、朝は太陽光を浴びる習慣をつけましょう。アメリカでは一部の州で高校の始業時間を遅らせる動きが広がっており、日本でも議論が始まっています。

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成人期(18〜64歳)の睡眠
睡眠の特徴
成人期の睡眠は比較的安定していますが、20代後半から30代にかけて、深い睡眠(徐波睡眠)の量が徐々に減少し始めます。40代になるとこの傾向がさらに顕著になり、夜中に目覚める回数が増える方もいます。
仕事や育児のストレス、不規則な生活リズムなど、環境的な要因が睡眠の質に大きく影響するのもこの時期の特徴です。
推奨睡眠時間
成人の推奨睡眠時間は7〜9時間ですが、個人差が大きいため、自分に合った時間を見つけることが重要です。
この時期に気をつけたいこと
交代勤務やシフトワークをしている方は、体内時計の乱れによる睡眠障害に特に注意が必要です。また、40代以降は睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まるため、いびきや日中の眠気が気になる場合は検査を受けることをおすすめします。
- 成人期は仕事や生活習慣が睡眠に大きく影響する
- 30代から深い睡眠が徐々に減り始める
- 40代以降はいびきや無呼吸に注意
- 規則正しい起床時間の維持が最も重要
高齢期(65歳以上)の睡眠
睡眠の特徴
高齢期の睡眠は、若い頃と比較して大きく変化します。主な変化として、深い睡眠が著しく減少し、浅い睡眠の割合が増えることが挙げられます。70代では、20代と比較して徐波睡眠が50〜75%減少するという報告もあります。
また、体内時計が前倒しになる傾向があり、夕方から眠くなり、朝の4時〜5時に目が覚めてしまう「早朝覚醒」が起きやすくなります。中途覚醒(夜中に目が覚めること)の回数も増え、睡眠効率(ベッドにいる時間のうち実際に眠っている時間の割合)が低下します。
推奨睡眠時間
65歳以上の推奨睡眠時間は7〜8時間です。ただし、実際に眠れる時間はもっと短い場合もあるため、無理に長時間ベッドにいないことが重要です。
高齢者の睡眠改善のポイント
高齢者の睡眠を改善するためには、日中の活動量を増やすことが非常に有効です。散歩や軽い体操など、適度な運動を習慣にすると夜の睡眠が深くなりやすくなります。
また、長時間の昼寝は夜の睡眠を妨げるため、昼寝をする場合は15〜20分程度にとどめましょう。午後3時以降の昼寝は避けるのが賢明です。
「眠れないのにベッドにいる」時間を減らすことも大切です。眠くないのにベッドに入ると、「ベッド=眠れない場所」という条件付けが形成されてしまい、不眠が悪化する悪循環に陥ることがあります。

ライフステージ別の睡眠問題と対策まとめ
各ライフステージで起こりやすい睡眠の問題と、その対策をまとめておきます。
- 乳児期の夜泣きは正常な発達過程だが、長期化する場合は小児科に相談
- 思春期の夜型化を「怠け」と決めつけない
- 成人期の慢性的な睡眠不足を「気合い」で乗り切ろうとしない
- 高齢期の不眠に安易に睡眠薬を使わず、まず生活習慣の見直しから
子どもの睡眠に関しては保護者のサポートが不可欠ですし、高齢者の睡眠については家族の理解が大切です。年齢による睡眠の変化を正しく知ることは、自分自身だけでなく、家族の健康を守ることにもつながります。
よくある質問(Q&A)
Q. 赤ちゃんの睡眠リズムはいつ頃から安定しますか?
A. 個人差がありますが、多くの赤ちゃんは生後3〜4ヶ月頃から昼夜の区別がつき始め、6ヶ月頃には夜にまとまった睡眠がとれるようになります。1歳頃にはかなり安定してくるのが一般的です。
Q. 子どもが夜更かしをしたがるのですが、どうすればいいですか?
A. 就寝前のルーティン(入浴→歯磨き→絵本など)を決めて毎日同じ流れを繰り返すと、体が自然と眠る準備をするようになります。テレビやゲームは就寝1時間前には終えるようにしましょう。
Q. 高齢の親が「眠れない」と訴えますが、受診したほうがいいですか?
A. 日中の生活に支障が出ている場合は受診をおすすめします。ただし加齢による睡眠の変化は正常なものも多いので、まずは日中の活動量を増やす、就寝時間を遅らせるなどの生活習慣の見直しから始めてみてください。
Q. 閉経後に不眠がひどくなったのですが関係ありますか?
A. 更年期のホルモン変化は睡眠に影響を及ぼすことがあります。ほてりや発汗で夜中に目が覚めることも少なくありません。婦人科や睡眠外来で相談すると、適切な対処法が見つかるでしょう。
睡眠は一生を通じて変化し続けるものです。「若い頃と同じように眠れない」と落ち込む必要はありません。大切なのは、今の自分の年齢に合った睡眠のとり方を知り、できることから実践していくことです。
参考:Sleep Foundation「Aging and Sleep」
参考:厚生労働省 e-ヘルスネット「高齢者の睡眠」(www.e-healthnet.mhlw.go.jp・サイト終了)
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